光桂寺・庫裏ができるまでの話④ 2025.11.30

庫裏ができるまでの話③の続き。

当時のノートを読んでみると、2015年の11月末から12月最初のころに起こったことなので、ちょうど10年前の話ということになる。

福岡から京都に戻る。お寺の方々との打ち合わせ内容、役所との打ち合わせ内容をまとめて、実測図もきちんと製図するなど、建物をプランニングするための準備を進めておく。また、今回の計画を進めるにあたり、指定確認検査機関とも打ち合わせをしておく必要がある。事務所の近所にはいくつかの検査機関があるが、関西以外の物件の検査も行う検査期間は1件しかないので、打ち合わせを行う。庫裏は木造・平屋建てで設計するつもりであったので、庫裏という建物自体は特に難しいものではないのではという話になったが、やはり問題は検査済証のない既存建物の存在であった。

京都では検査済証がない古い町家の増改築工事などが多いので、そういうややこしいことがまあまあ発生するわけだが、住宅と比べて寺院というある程度公共性の高い建築物ということもあるのか、他府県ということもあるのか、「まあこの辺は福岡県と土木事務所の担当の方と話を進めていってはどうでしょうか・・」と担当者もなんとなく乗り気ではない。しかしここの検査機関には既存不適格の調査を専門に行う系列会社もあるので、後でそこにも聞いてみることにしようと思ったわけだが、既存建築物に関しては僕以外の人間が設計したわけだから、そのことに関しては僕には関係はない(ということはなかったのだが)ので深く悩むことはない、といったん結論付けて、庫裏の建物本体のラフ図面をぼちぼち進めていく。

お寺の方と話した際、新しい庫裏には、葬儀などの法要を行えるホールを作ってほしいとの要望を受けていたのだが、湯灌設備も欲しい、とも言われていた。湯灌とは納棺前に故人を洗い清める浴槽のような設備であるが、それを聞いたときは「そこまでやるのか」と驚いたのだが、必要ということであれば設置しなければならない。しかし僕は湯灌を見たことがない。どうしたものかと考えた末、事務所の近所の葬儀場を見学させてもらうことにした。

葬儀場の方には申し訳ないのだが、「実は身内の者がそろそろ・・」みたいな適当なことを言って、中を見学させてもらった。エントランスホール、クローク、大小のホール、お斎の部屋、お通夜の際に複数の家族が宿泊できる部屋と、大浴場。湯船からは賀茂川が一望できる。

最後は湯灌室を見せてもらった。湯灌室は8畳ほどの大きさで、隣には小さな控室が配置されており、控室のガラス窓越しに湯灌室を窺うこともできるようになっている。湯灌室中央には大きな浴槽が設置されていて、壁・床ともパステルカラーのタイル張りで暖かい雰囲気を演出しているようではあったが、他の諸室とは明らかに異なる空気、霊的なものとかそういうものではなくて、厳粛な空気が流れていたように思われた。

その他、チャイルドルームはもちろん、喫煙室もあった。禁煙禁煙となにかと口やかましい世の中ではあるが、葬儀に参列するというプレッシャーやストレスを考えると、そういうリラックス空間も必要なのかしらんとつくづく思ったので、新しい庫裏にはそういう半外部空間をいくつか配置している。

に続く