咆哮・2kwgallery

滋賀県大津市に建つ現代美術ギャラリーを持つ兼用住居。

現代美術作家でもあるクライアントは、大阪市の靭公園に面したビルで同名のギャラリーを運営していたが、家族の都合で滋賀県へ移住することになり、それならばギャラリーと住居をまとめてしまおうということで、この計画は始まった。

敷地はJR大津駅から徒歩10分ほどの所にある緩い傾斜地で、国道1号線に面しているため交通量が多く、騒音や振動が気になったが、南西は緑深い山に囲まれ、北に琵琶湖や比叡山も望むこともでき、それらを取り込むことで面白いギャラリーができるのでは、と考えた。

クライアントからの要望は、出来る限りギャラリーの壁面を大きくとること、1階ギャラリーの天井を高くすること、西陽をギャラリーに取り入れること、ギャラリーと住居の空間を反転させること、迷路のような空間であること、屋上から琵琶湖が見えること、周辺環境から自立した建築形態を持つこと・・などであった。

まずは敷地東側に2台分の駐車場を切り取り、各敷地境界から500セットバックさせたラインを建物の外壁面と設定すると、平面形状は敷地形状と同じく歪んだ四角形となった。

1階は風除室や住居用玄関を小さくして展示空間を確保し、天井の高さは3300と設定し、2階に上がる階段に沿って配した窓から西陽を取り込むことで、ギャラリー内に揺らぎのようなものが現れるよう計画した。

2階北面には琵琶湖や比叡山を眺めることができる窓を、小ギャラリーにはトップライトのある吹き抜け天井を、東側に跳ね出した台所には国道1号線につながる窓を設けることで、大自然や人工物と接続させて、この小さな建築に巨大なスケールをねじ込むことを目論んだ。

3階の寝室は騒音から室内を守るため、屋上の手すり壁を高く立ち上げ防音壁とするとともに、この建物の外観を強く印象付けることにもなっている。屋上からは、春には新緑、夏には琵琶湖の花火大会、秋には紅葉、冬には雪山と、四季の景色も楽しむことができる。

大阪・京都方面から滋賀県への入り口となるこの場所で、新たな芸術文化の拠点となることを目指した。

竣工:2017年
構造・規模:木造在来軸組み工法 3階建て
延床面積:112.86㎡
構造設計:エス・キューブ・アソシエイツ
施工:北川工務店
写真:塔本研作建築設計事務所

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